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三浦技研
前に書かせていただいたように、現在のゴルフメーカーのほとんどが、製造を主に中国へ外注し、コストダウンのために自社で物を造ることを放棄しています。そこで出来上がってきた製品の精度に至っては惨憺たる状況であるのが現実です。そんな時代の流れの中でも、地元に腰を据えて自社工場で製品を作り続け、精度の高い道具を世に出し続けてきたメーカーがあります。
ゴルファーの方で、三浦技研というブランドをご存じの方は意外と少ないかもしれません。兵庫県神崎郡で、ゴルフクラブやヘッドを製造・販売している会社です。この会社が世に出しているゴルフクラブに 「MGヘッドシリーズ」 があります。主に軟鉄鍛造アイアンを作っているのですが、 その精度はゴルフ業界の常識を遙かに超えた高い精度っ誇っていました。
神の手と言われる三浦技研代表、三浦勝弘氏は 「意外かもしれないが、ヘッドで最も重要なことは重量の精度である。クラブの長さとバランスによって必要な重量は決まるが、数グラムの誤差でシャフトのしなりも打球感も変わってしまう。重量をセットのつながりの中で守ることは、絶対達成しなければならないことなのだ」 と言っていました。
三浦技研では5番アイアンのヘッド重量が257gで ( カーボンシャフト用は264gと+7g ) 1番手変わるごとに7gずつ変化していきます。7gと言われてもピンと来ないと思いますが、1円玉7枚分に相当します。極わずかな差のように感じる方も多いと思いますが、クラブを組んだことがある人間にとって、7gの差というのはとても大きい数字です。
大切なのは、番手ごとにこの7gの差が、階段のごとく変化し続けることです。三浦技研では、 鍛造製法としては驚異的な、重量誤差±0.5gという精度 を誇っていました。7gがとても大きい数字だと言っておきながら、重量誤差±0.5g、つまり1gの誤差範囲が驚異だと言っていることに矛盾を感じることでしょう。
ヘッドの重量の誤差なんて、工業製品なのだから、ちゃんとできて当たり前じゃないかと思われがちですが、手作業の職人的作業が多い軟鉄鍛造製法では、オーバーな表現ではなく、 その日の職人の気分がヘッドの形に変化が現れるほどデリケート なものなのです。
例えば、ヘッドの重量誤差±3gをOKとしているメーカーがあったとします。番手間の重量差は本来7gの設計とします。5番アイアンで257gの基準から+3gブレて260gに。6番アイアンで264gの基準から3gブレて261gになったとします。260gの5番アイアンに、261gの6番アイアン。番手間の差が1gしかなくても基準内の製品なのです。皆さんは、こんなデタラメなクラブを使いたいと思いますか?
三浦技研は本当に素晴らしい会社だと思ってきました。物作りへのこだわりが製品として形になっていた数少ない会社だと思います。莫大な予算を使って契約プロを獲得して、ブランド名を売るような戦略はとっていませんし、雑誌各社も広告費や用具提供、取材協力で世話になっている大手メーカーの手前上、三浦技研のような本当の仕事をしてきたブランドを、全面に出すことはできないでしょう。そんな背景から、ブランド名の露出度は顕著ではありません。一般のゴルファーの目まで届くことは少ないでしょう。しかし、本物というのはそう言われるだけの理由があり、また、それをやり続ける力を持っています。
当店は相当うるさい取引先だと思われていたのも幸いしてか、三浦技研のヘッドは重量だけでなく、ライ角やロフト角も、ほとんどカタログ値どおりの状態で当店には届いていました。ヘッドの製造現場を知っている私からすると、このことは本当に驚かされることであるのと同時に、 賛美に値すること だと常々思ってきました。
・・・が、最近は少々問題を感じるようになってきました。確かに、まだ精度は高いのですが、「他と比べると」という前置きが必要になってきました。経営効率を追求しているのでしょうか、軸足が今まで築き上げてきた方向とは、違う方向に変化してきているように感じます。本当に素晴らしいヘッドを出荷し続けてきた時代を知っている分、このことは少々残念です。
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