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北市秀男のゴルフクラブ・フィッティング思想



北市秀男のゴルフクラブ・フィッティング思想

 ゴルフクラブを、ゴルファーの身長や体格、体力レベルに応じてフィッティングするのは極めて当然の行為です。もし、この話がゴルフクラブではなく、 洋服の話だとしたら、フィッティングは誰もが当然の行為だと思う はずです。

 自分のウエストより大きいと服が脱げてしまう。自分の袖丈より長いと手が出なくて物が取りづらいと、自分に合っていないことがすぐに感じとることができますし、自分に合わない服を着続けることの不便さを直感的に感じることができるのは言うまでもありません。

 これがゴルフクラブだったらどうでしょう。

 ゴルフはもともと難しいスポーツです。そのスポーツとしての難しさに紛れてしまい、自分と道具の関係が、一体どうなっているのかが感じ取りにくいのが一般的です。また、日本人の多くはとても真面目な性格でもありますので、上手くいかないのは自分が悪いからだと考えて、とにかく今ある環境や道具で頑張ってしまう傾向が強くあります。ひたむきに頑張る姿は美しくも見えますが、ことゴルフの上達に焦点を合わせると、少々考えものです。

 例えば、身長が185pで生まれ持って筋肉量がとても多い欧米人の、それも極端なスライサーの人が打った時に、はじめて真っ直ぐ飛ぶようにセッティングされたアイアンがあるとしましょう。その道具を手にした身長170pの日本人が、一生懸命身につけたボールを真っ直ぐ飛ばすスイングは、果たしてその日本人にとって、その本人にとっての一番いいスイングだと言えるでしょうか? 

 また、幼児向けのジュニア用の極端に短いアイアンを使って一生懸命練習をして、ナイスショットが連発できるスイングを身につけたとします。しかしそのスイングは、そのゴルファーの体型、体格に合った自然なスイングと言えるでしょうか? どこかを無理して、使うべきところを使わずにスイングをしたり、その逆のことをして調整していないでしょうか?

 ゴルファーは道具に合わせてスイングを作っていきます。 このことは間違いありません。自分に合っていない道具と一生つきあって、その道具だけでナイスショットできる、第三者の視点では問題の残るようなスイングを身につけるのも一つの手段です。しかし、自分の体型に合った自然なスイングをしたときにナイスボールが出る道具を持つのも、別の手段としては存在しています。

 自分に合っていないゴルフクラブであってもゴルフはできます。筋肉量の多い大男のスライサーのために作られた極端な道具でも、幼児用の短くて軽いゴルフクラブでも、ゴルフはできますし、慣れればいいスコアが出るかもしれません。しかし、スイングだけでなく、ゴルファーの体も心配になってきます。そのまま何年も、その道具に合わせたスイングをして、腰や関節は大丈夫でしょうか? 本来使うべき体の部位がしっかり使われてストレッチされているでしょうか? 発達すべき筋肉群は使われる道具でしょうか? 逆に使われ過ぎて故障につながらないでしょうか?

 自分に合っていない道具を使い続けると、ゴルファーとしての寿命にも影響が出てきます。軽過ぎるクラブを使っていると、最初は楽ですが、確実に体力が落ちていきます。加齢で本当に人間として筋力が落ちてきた時に、一気に飛ばなくなるでしょう。逆に重すぎる道具を使って頑張りすぎて、腰や関節に重大なダメージを与えてもいけません。

 このように、ゴルファーのスイングという面と、体力という面で、フィッティングは本来とても重要な役割を担っています。しかもこれらは時間軸に基づいて語られるべきなのです。

 しかし、残念ながら日本では、まだ本当の意味でのフィッティングという概念が浸透していません。私にとってフィッティングとは、「そのゴルファーが、今どんな道具を持って、どんなスイングをして、どのくらいの時期に、どういうボールが打てるようになって欲しいか」を伝えることです。そうやって、時間をかけてお付き合いしていき、そのゴルファーがもっと打てるように上達してくれば、またそれに見合う道具を少し先回りしてご提案する。そういったかかりつけの主治医のような機能を付加して、こちらとしても真面目にゴルファーと向き合ってこそ、本当のフィッティングができるのだと思っています。ドライバーを3本持ってきて、それを鳥かごで打って数字を出して「これが一番飛んでいますね」というのはフィッティングだとは思っていません。それならゴルフを知らない人でもできます。北市秀男はオペレーターではありません。





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