《動画》新品ゴルフクラブの精度検証[コブラ]
「コブラだから」というワケではありません。国産・海外メーカー問わず、多かれ少なかれ、こういう問題は公差として存在する前提で、クラブは売られているのです。
ゴルフクラブの世界にも偽物が存在していましたが、特に2009年頃からその様相が悪質化してきています。このホームページをご覧の皆様も、今回書いたような事前情報を把握した上で、ご購入の判断などをしていただきたいと思います。
以前のゴルフクラブにおける偽物と言うと、アディダス→アディバス的なノリがあって、例えばPING→PJNGみたいな、日本人ではもはや発音できない次元のロゴだったりと、どこかクスリと笑える可愛らしさもあったワケでが、現在の偽物は昔の「なんちゃって」から「詐欺」の領域に達しています。さすがに店頭でこういった偽物を買ってしまうほど世の中荒廃してませんし、消費者だってその程度の自己防衛はできる中でこういう物を掴んでしまう方は、全員がネット購入者であることは時代の流れ、流通構造として納得のいくものです。
お金を振り込んでも商品が届かない。という最悪な結果を考えれば、まだ偽物でも何らかの商品を送ってきてくれるだけマシ…とも言えますが。やっぱり全然ありがたくない商取引です。安全を期して着払いにしたところで、お金を払わないと荷物を開梱する権利がないのですから、結局のところ自己防衛のやりようが無いのが特にネットオークションで顕著だと言えるでしょう。
ネットで買うとしても、ネットオークションなら実店舗を持って真っ当な商売をしてそうな店舗から直接買うしかない。それだけで絶対とも言えませんが、出来る事と言えばその程度でしょうか。
2010年モデルのゴルフクラブで本物と偽物が比較できる画像がありますのでご参考までに。
【左:偽物/右:本物】
【上:偽物は印字太くフチ荒れ/下:本物】
【上:偽物はロゴ雑、ライン短/下:本物】
製品は重量・素材・ヘッドのウエート設定など品質は明らかに劣りますが、見た目だけでいくとかなり酷似しているのが最近のトレンドです。購入者が偽物と気付かずに使い続け、手放す段階で下取りに持込まれたケース、ネットオークションで売り捌く際にトラブルになって発覚する場合が多いようです。
当店でもフィッティングにご来店のお客様のゴルフクラブが偽物だったケースがあります。当店で確認された偽物アイアンは、本来比重の重いタングステンがソールに打ち込まれているモデルだったのですが、その部分はステンレスのままで塗装の吹きつけでぼかしを入れて異素材の風合いだけを出していました。さすがに構造までは完全にコピーはしていませんでしたが、ニセモノの現物を見て参考になりました。PROJECT X というシャフトが装着されていたものもありましたが、クラブヘッドだけでなくシャフトも偽物の可能性が極めて高いものでした。
一般のルートではクラブヘッド単体で流通するはずがないヘッドが、新品の状態で流通していたら手を出さない方が得策です。もちろん、相場より著しく安くなっている新品ゴルフクラブが出回っていたら、ちょっと気をつけていただきたいと思います。
ネットでポチ、という時代です。ゴルフクラブもご多分に漏れずというところですが、そういうゴルフクラブは大丈夫でしょうか?
正直、リアルに実在する店舗で購入するゴルフクラブと、バーチャルなネットショップで購入するゴルフクラブに差が存在するのか?しないのか?このページをご覧になっている方も、興味があるのではないでしょうか?
「ネットで買っても、大型店で買っても、当店のような小さなゴルフショップで買っても品質に差がなく同じゴルフクラブだ」というのであれば当然、電化製品のごとく、ゴルフクラブを1円でも安いお店で買うという行動はいたって正常な行動だと思います。でも、ちょっと待って下さい!それで終わってしまっては、当店の存在意義もありません。とても大切な事を書きますので、もう少し読み進めてみてください。
例えば、ゴルフクラブ(アイアン)が正しく機能するかどうかを考えた時に重要な要素になってくることのひとつに、番手間におけるロフト角の差、ライ角の差、重量差があります。そういうものが階段の高さように均等で、綺麗に流れているかどうかが大切です。わかりやすいので下に表を提示します。まずはロフト角を例に取ってみましょう。一般的にロフト角は4度ピッチです。7番アイアンのロフト角が34°だとすると…
#6 |
#7 |
#8 |
|
ロフト角 |
30° |
34° |
38° |
ライ角 |
60.5° |
61.0° |
61.5° |
ヘッド重量 |
264g |
271g |
278g |
飛距離 |
160y |
150y |
140y |
この様に、6番は30°になり、8番は38°になっいるのが理想です。「4°で10y」の飛距離差がだいたい出せる振り方が出来ている前提で話すと、6番と7番のロフト差が4°だから、番手間の飛距離差が10yになります。7番と8番のロフト差が4°だから、番手間の飛距離差が10yになります。
ではこの状態から、7番アイアンのロフトだけ綺麗に4°ピッチで流れずに、2°立った状態になっていた場合を見てみましょう。
#6 |
#7 |
#8 |
|
ロフト角 |
30° |
32° |
38° |
ライ角 |
60.5° |
61.0° |
61.5° |
ヘッド重量 |
264g |
271g |
278g |
飛距離 |
160y |
155y |
140y |
番手間の飛距離差に注目して下さい。6番と7番の飛距離差はたったの5yなのに対して、7番と8番の飛距離差は15yも出てしまいました。日常的にゴルフをしていて「7番は飛ぶけれど、6番は飛ばないんだよな」「7番も6番も飛距離がたいして変わらない」というゴルファーは、こういうゴルフクラブを使っているのかもしれません。
飛距離なら、まだなんとかなるかもしれません。ライ角だったらどうでしょう?
#6 |
#7 |
#8 |
|
ロフト角 |
30° |
34° |
38° |
ライ角 |
60.5° |
59.0° |
61.5° |
ヘッド重量 |
264g |
271g |
278g |
飛距離 |
160y |
147y↓ |
140y |
0.5°ピッチで綺麗に流れるべきライ角が、7番アイアンだけ2°フラット(ライ角の数字が少ない状態。※逆にライ角の数字が大きい場合はアップライトという)になっています。
「2°」という数字自体は小さく感じられる方も多いと思いますが、結果は予想以上に大きく違うでしょう。敏感な方であれば、構えた時のクラブヘッドの見え方や手の位置、シャフトと体の角度などで違和感を感じるでしょう。
フラット(ライ角の数字が少ない状態)であれば、ボールは右へ行きやすくなります。そういったゴルフクラブの特性が引き金になって、打ち方の問題も加わってスライス回転がかかれば、飛距離もどんどん落ちる事になります。
この様に、番手間におけるロフト角の差、ライ角の差、重量差が綺麗に流れているゴルフクラブを持つことは大切でだという事はご理解いただけたと思います。
面白い事にお客様を見ていると100を切れないゴルファーでも、80台が出せるゴルファーでもゴルフの腕前に関わらず、こういう「ゴルフクラブがおかしい」事実を自然に感じ取っています。
先日も、100を切りたいとご来店いただたいた新規のお客様の8番アイアンだけが不自然に綺麗でした。聞くと「普段から真っ直ぐ飛ぶワケではないが、この番手だけは特に、なぜか真っ直ぐ飛んだためしがないので、あまり使わない」という話しがあり、計測すると、ライ角がその番手だけ恐ろしいほど極端に曲がっている。「お客さん、正解ですよ。これなら真っ直ぐ飛ぶはずはありませんよね」と。
当店において、こういう話しは決して珍しい事ではありません。
ご覧の皆様も、キャディバッグの中に普段使っていない特定のゴルフクラブがある場合は、意外とゴルフクラブに何か問題があるのかもしれません。「そんなの解るのは上手い人だけだ」と思っている方がほとんどなのですが。いやいやどうして、全くそんな事はありません。これは当店に来店されるお客様を見ていて断言できます。
では、話しの核心に進みましょう。ネットで買うとこういう問題のあるゴルフクラブをつかまされることになるのか?次のページをご覧下さい。
さて、話しを戻していきましょう。
残念な事ですが、メーカーから入荷されたゴルフクラブは、ほとんどの場合で前ページ『未調整ゴルフクラブ問題1』に書いたような問題を大なり小なり抱えています。夢を壊すようで申し訳ありませんが、これは一般のゴルファーが想像する以上に悲惨です。あなたが大好きな、あのカッコイイと信じて疑わないブランドも実は…という事も十二分にあり得るのです。
特定のブランドに入れ込んでいらっしゃる方ほど、裏切られた感が強くショックでしょう。ブランド力を形成するためにメーカーが投下している広告費と、ゴルフクラブの精度はリンクしていないのが現実です。
私の様なメーカーから納品されたゴルフクラブの精度にうるさい店主がいて、リアルな店舗を持っているゴルフショップであったとしても、メーカーから入荷されてくるゴルフクラブの精度が良いとは言えません。私はお客様と面と向かってゴルフクラブをお渡ししています。もちろんゴルフクラブに問題が生じればアフターフォローもいたします。そういう売り手の責任が問われるような店にでも、メーカーは精度の低いゴルフクラブを卸してくるワケですから…
もしもメーカー内で精度の荒検品をしているのであれば、ネット中心に商売をしている様なショップには、もっと問題のある商品を流している可能性もありますし、逆にメーカー内で一切検品をしていないという事であれば、節分の豆まきのごとく、たまたまこっちに降ってきたものが良かったとか、悪かったとか、そういう次元で物が流通している事になります。私も過去には設計者としてメーカーにいた人間ですので、もちろん内部事情はわかるのですが。まあ、これくらいにしておきましょう。
ですからこうなってくると、ネットで買うからどうこうという次元ではなく、小さいショップで買っても、大型量販店で買っても、メーカーから納品されたままの状態でお客様に横流し、つまり、未検品・未調整の状態でゴルフクラブが手渡されるという事が、ゴルファーにとってどうなのか?今回はそのリスクを感じ取っていただければ幸いです。
私も業界内で飯を食っていますので、自分の業界批判は正直したくはありません。しかし、それはお客様の為にはなりません。お客様本意で考えれば、業界の事実を理解して頂き、その中でゴルファーご本人が、たくさんある選択肢からゴルフの道具を選んでいければいいと考えます。
ここだけに限らず、当ゴルフレッスンスタジオのホームページには、業界のタブーがたくさん書かれています。こういう事を書く事で私がメーカーからの圧力を受けたとしても、お客様の為には、それを知って頂く必要があると思います。
メーカーからの広告収入で成り立っているゴルフ雑誌では書けない現実を、私のホームページから読み取ってただければと思います。
「それならネットの最安値で買って、どこかに持っていって調整すればいいのね」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。ぜひ、次のページもご覧になって下さい。
今までの話しを受けて、それなら最安値の新品ゴルフクラブをインターネットで買って、それをショップに持って行って、調整をしてもらえばいいんだろ、と思う方もいらっしゃるでしょう。実のところ、もう一段問題がありますので、これを機会に認識されておくといいと思います。
当店にご来店いただいたお客様に、こんな鋭い指摘をされた方がいらっしゃいました。
「今まで、札幌近郊にある複数の大型量販店に出入りを続けてライ角調整をしてきたが。どうやら計測する人によって数字がちょっと違う。数字が変わっているとかが続いて、何を信用していいのかわからなくなった」と。それで当店へ、いらっしゃったのですが。実は使っている機材によって、こういう事が明らかに起こるという事は、私としては常識です。
大きくはふたつの要因があるのですが。ひとつは計測に使う機材の問題です。
これは意外と思われる方が多いと思いますが一般に流通しているライ角・ロフト角の計測器に、良いモノが少ないという現実があるのです。
ロフト角の話しは除外するとして、ライ角の測定器だけに関して言うと。シャフトを掴むタイプの測定器という物があって、それであれば破綻なく機能すると思います。シャフトを掴んで固定して、人の手で台座とスコアライン(フェースの溝)を水平に合わせて、結果としてシャフトとスコアラインの角度を計測してライ角とするのが一般的です。別の考え方としては、ソールしたときに地面に接地する船底の頂点を使うやり方などもありますが、まずシャフトを掴むタイプであれば、機材としては信用おける部類だと考えていいでしょう。
その一方で、代表的なところではフォーティーン製の計測器などに見られる方式なのですが。シャフトを掴むのではなく、フェースを掴むタイプの計測器があります。これは実際に計測したことがある人でないとピンとこないと思いますが、ヘッドを掴むという事は、何を基準にした掴みなのか不明瞭になりやすいものなのです。ヘッドを掴んでシャフトの角度を測定するので、掴み方が変わると数字が変わるのです。
シャフトを掴むのであれば、誰がやっても変わらないし、再現性もあるのですが。ヘッドを掴むという事に関しては、再現性がなかなかないものなのです。前ページ『未調整ゴルフクラブ問題1』の表のとおりですが、ライ角自体が0.5°の世界なので、ちょっと掴み方がズレただけで、それがそのまま数字に直結するワケです。このようなフォーティーン製の計測器が、市場にはかなりの台数、流通しているのです。
そして要因の第二点目になりますが。その様にヘッドを掴むタイプの計測器の場合、「これが、このヘッドがピタッとはまっている状態だよね」という基準が、計測者の感覚によって違うという事です。
そもそも、当店の特注品の計測器を含めて、どんな計測器を使っていても、完全というものは無いと言っていいでしょうが。あまりにも不揃いなものはどうかと思います。少なくとも調整は同じ人にやってもらえる状況が望ましいでしょう。人間を固定すれば前と比べてフラットにする、アップライトにするといった時の「前」に対するブレが少ないですから。人が変わってしまうと「前」自体の数字が変わってくる可能性が大いにあるので注意した方がいいでしょう。
そもそも、グリップ挿入ひとつにとってもメチャクチャな店員さんが、そのままライ角計測もしているという現実があるワケです。
お客様のゴルフクラブを拝見して「このグリップ、どうしてこういう向きに挿すのかな?」と思って「お客様、ご自分でグリップ交換されましたか?」と聞くと「あの店でやってもらいました」という耳を疑うような話しが、少なくとも当店においては多いのですから、調整と名の付く行為を経ていれば、どれも同じではなく、調整もピンキリで、改良もあれば改悪もあるとこう現実をご理解いただきたいですね。結局は、技術力の差です。
ちなみに当店の計測器は、シャフトを掴んでスコアラインを調整してライ角を計測しつつ、それに対してフェース面をスクエアに向けてからロフトも計測するような仕組みになっている特注品です。ヤマハで設計をしていた時代に使っていた計測機器を作ってもらっていた製作所に発注して、作っていただいた計測器を使っています。
「コブラだから」というワケではありません。国産・海外メーカー問わず、多かれ少なかれ、こういう問題は公差として存在する前提で、クラブは売られているのです。
カスタムゴルフクラブを作るメーカーだからと言って、それが完成クラブの精度と直結しているわけではありません。意外と思われるでしょうが。それはそれ、これはこれ、なのです。
クリーブランドは、宮崎にあるダンロップの工場で組み立てられています。他社との相対比較では状態はいい方ですが、やはり完璧ではありませんね。
《NEXT》→『並行輸入ゴルフクラブの問題点』